研究概要 |
抗癌剤による癌細胞のアポトーシス感受性増強効果を確認することと、その臨床応用を目的に以下の実験を行った。 CDDPの癌細胞に対する作用をFlowcytometryで解析し、MTT法にてCDDPに対する感受性を測定するとともに抗Fas抗体の細胞障害活性をCDDPの前処置の有無で比較した。また、^<51>Cr release assayでLAK細胞による細胞障害活性をCDDP前処置による有無で比較した。さらに、抗Fas抑制抗体による抑制実験も行った。 それによると、食道癌培養細胞株6株中(TE-1,2,3,4,5,SH-1)5株においてFas発現を認め(26.2-61.5%)、CDDP前処置で5株全株でFas発現は有意に増加した。抗Fas抗体(CH-11)のこれら癌細胞に対する細胞傷害活性はCDDP処理により有意に増強し、その効果は相乗的であった。抗Fas抑制抗体(ZB-4)は有意の細胞傷害活性抑制効果を示した。 次に臨床応用を目指したLAK細胞をエフェクターとする実験系ではCDDPで前処置することによりFasLを発現したLAK細胞によるTE-2に対する抗腫瘍活性が有意に上昇した。CMAでLAK細胞のperforinをblockしてもTE-2に対する抗腫瘍活性は存在し,CDDPの前処置でその活性は有意に上昇した。CDDPで前処置したTE-2においては抗Fas抗休(ZB-4)でFasを抑制することによりperforinをblockしたLAK細胞の抗腫瘍活性は有意に減少した。 以上のことよりCDDPによる前処置によりLAK細胞の抗腫瘍活性は増強しその作用機序としてFas-FasLを介したアポトーシスが関与していることが明らかとなった。臨床食道癌検体でもFas発現は免疫組織学的に確認されており、Fas発現の有無がCDDPの感受性のマーカーになる可能性が示された。
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