研究概要 |
1. 膵切除後門脈内mitomicine C投与による肝組織中サイトカイン濃度の変動 雄性balb/cマウスを全身麻酔下に開腹し,膵体尾部を切除した.除終了後門脈内にmitomicine(1mg/kg)の投与を行ったものと投与を行わなかった2群について(投与群,膵切群),経時的に肝組織を採取しホモジネートし,上清を採取した.上清中のTNFα,ILlβとIL6の濃度をELISA法で測定した. 両群ともTNFαとIL1βは有意な変動を示さず,両群間にも有意差はなかった.IL6(pg/mg protein)は膵切群・投与群とも,術直後0.68±0.27,0.43±0.20から術後30分に11.5±3.2,8.17±0.60へと有意に増加し,それぞれ24時間,12時間にも有意に上昇していた.両群間に有意差はないが,各時点とも常に膵切群が高値を示した. 2. 膵切除後の肝組織中E-selectin(ELAM-1)mRNAの発現 凍結肝組織よりacid-guanidine-phenol-chloroform法でtotalRNAを抽出した.マウスのE-selectin遺伝子配列より,オリゴプライマ-を作成し,reverse transcriptase-polymerase chain reaction法(RT-PCR)を行った後更にPCR反応を施行し,E-selectin遺伝子の発現の有無を検索した.internal controlとしてGAPDHの発現をm-RNA採取およびRT-PCR反応の成否の指標とした. 両群の切除後1,3,6,12,24時間後の肝組織では,GAPDHは何れの検体についても発現が認められ,m-RNA採取およびRT-PCR反応は問題なく施行出来た.一方,両群ともE-selectinに対するRT-nested PCRでは,今回の検討した時間内で特異的なバンドは全く認められず,本実験系でのE-selectinの発現はないものと判断された.
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