研究概要 |
進行胃癌の予後はいまだに不良であるが,拡大郭清・その他集学的治療によりその予後向上が期待できる.しかし腹膜播種陽性例では,切除単独での治療のみで予後改善が期待できる症例は少ない.また,治癒切除が施行された症例においても,約半数以上の症例が腹膜播種で再発死亡している.本研究では胃癌腹膜播腫性転移の診断および腹膜播種性転移再発予測において従来の細胞診(CY)に加え,癌細胞から産出されると予測される腹水洗浄液中のCEA蛋白濃度を測定しかつCEA-mRNAを検出し,両者の相関および再発,予後との関連を検討した. CY陽性症例は予後不良であり,腹膜転移陽性症例とほぼ同様の生存率であり,胃癌における予後因子と考えられた.しかし腹膜転移が存在するにもかかわらずCY陽性は55%であり,45%は陰性であった.また術後腹膜転移再発症例の31%はCY陽性であったが69%はCY陰性であった.このことは細胞診の感度の問題であろうと考えられる.CEA-mRNAとCEA蛋白濃度を測定したが腹膜転移症例に対してはCEA-mRNAが90%,CEA蛋白が70%の陽性率であり,術後腹膜再発症例に対してはCEA-mRNAが94%,CEA蛋白が63%の陽性率でありともに従来の細胞診より高感度であった.腹膜再発予防治療を施行するためには腹膜再発危険群の選別が重要であり,その選別に腹腔内の遊離癌細胞を検出する方法つまり腹腔内を洗浄しその洗浄液中の癌細胞を検出することは現在のところ最も有用な方法であると考えられる.そしてその感度を向上させる方法として従来の細胞診にくわえてCEA-mRNAの検出,CEA蛋白濃度の測定はより高感度診断法として有用であると考えられた.
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