研究概要 |
血管新生抑制を利用した食道癌のターゲット療法開発のために血管新生促進効果のある増殖因子受容体系すなわちVEGF-RNaseを用いたVEGF/flt系を当初計画したが,遺伝子工学的にFGF-RNaseの作成に成功したのでこのFGF/FGFR系で検討した. FGF-RNase fused proteinを岡山大学工学部より供与を受けて血管新生阻害効果を検討した.同proteinは大腸菌で発現させ,インクルージョンボディーから可溶化・リフォールディングの後精製して得た. 新鮮ヒト臍帯動脈切片培養法による検討:臍帯動脈切片はヘパリン結合セファロースカラム処理によりFGFを含むヘパリン結合性増殖因子を除去した20%FCS添加Medium199で培養し,FGF-RNase fused proteinを各種濃度で投与し,新生血管を位相差顕微鏡下に観察してNIHimageを用いて画像解析した.FGF-RNase fused proteinを0,100,200,300ug/0.5ml/well添加条件下で新生血管指数はそれぞれ3.2,2.7,2.0,0.3となり濃度依存的に血管新生抑制効果が認められた.一方,RNase単独やFGF単独,RNaseとFGFの混合では抑制効果は認められなかった.以上の結果からこの抑制結果は血管内皮上のFGF受容体を介する効果であると考えられた. 家兎角膜法による検討:FGF2ug投与により安定した血管新生誘導系を確立し,さらにFGF-RNase fused protein 32ug含有メチルセルロースディスク法で完全な血管新生抑制を認めた.SCIDマウス移植腫瘍での検討:A431細胞をSCIDマウス皮下に移植し,移植腫瘍辺縁にFRFPを移植日より3週間連日1.45mg局注した.control群にはPBSを同様に投与した.連日腫瘍径を測定し推定腫瘍重量(W(mg)=0.5×LS;L(長径)S(短径))を算出し検討した.3週目の推定腫瘍重量はcontrol群3629.6±794.9(mg),FRFP投与群2420.9±401.4(mg)であり明らかな腫瘍増殖抑制効果を認めた.また死亡例はなく,体重の減少を含めて両実験においてこの濃度範囲での毒性は認められなかった. FGF-RNase fused proteinはA431細胞移植可スキッドマウスの腫瘍増殖を抑制したことより.新しい腫瘍血管新生抑制剤になる可能性が示唆された。 また食道癌における新生血管の臨床腫瘍学的意義を検討するため,VEGF発現と組織内微少血管密度を測定し,両者が予後因子となることを明らかにした.現在論文投稿中である.
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