研究概要 |
(1)肝硬変ラットに対するHGFの肝線維化抑制効果 チオアセトアミドによる肝硬変ラットに45%肝切除術を施行し、HGFの持続静注を行った。HGF投与により肝再生率、PCNA labeling indexの増加と肝機能の早期の正常化、血清脂質の高値を認めたことからHGFは部分肝切除後肝硬変ラット残存肝の再生促進、肝機能の改善作用を有すると考えられた(Journal of Hepatology,27,1997)。 (2)肝臓の脂質代謝におよぼすHGFの効果 ラットの培養肝細胞にHGFを添加し、細胞の脂質および培養液中への脂質遊離を経時的に測定した。培養液中への脂質分泌はHGFによる細胞内での脂質合成および分泌促進によることが明らかとなった。これらVLDL画分への脂質分泌増加はチロシンキナーゼ阻害剤であるgenistein(100mM)により完全に抑制された。このことはHGFが受容体c-metに直接作用し脂質合成、分泌を促進していると考えられた(Hepatology 25,1997)。 (3)ラット肝の虚血再潅流モデルにおけるHGFの肝障害保護効果 肝70%領域の門脈、肝動脈、胆管に60分間の血流遮断を行い、その後遮断を解除するラット肝の虚血再潅流モデルにHGFを投与した。HGFが虚血肝において熱ショック蛋白質(HSP)を誘導し、肝障害防止効果を認めた(Journal of Surgical Research,92,2000)。 (4)低酸素および熱処理ストレスによるNO産生とHGFの抑制効果 ラット初代培養肝細胞に。IL-1βを添加し、低酸素や熱処理を行った。HGF添加群でATPの増加とケトン体比の上昇、さらに培養液中の一酸化窒素産生の増加を認めた。この増加は細胞内iNOS蛋白でも確認された。さらに、各処理により誘導されたHSP70蛋白もHGFにより増加していた(Hepatology,32,2000)。
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