研究概要 |
【目的および方法】正常ラット(NORM)と四塩化炭素(C-LC)およびthioacetamide(T-LC)による肝硬変ラットでHigginsらの方法で2/3肝部分切除術を施行し、形態的および機能的肝再生を経時的に比較した。C-LCは四塩化炭素とフェノバルビタールの経口投与で、T-LCはthioacetamideの飲水で作成した。2/3肝部分切除術を施行し、前、直後、1,2,3,5,8および21日の各時点で形態および機能的肝再生を評価した。形態的肝再生は肝重量比、肝組織あたりのDNA含量および肝組織のPCNA陽性率で評価した。機能的肝再生はICG(0.5mg/kg)負荷時の消失率(ICG-k値)、およびアミノピリン(8mg/kg)の静脈投与によるクリアランス(CLamp)をガスクロマトグラムにより測定し評価した。 【結果】LC(C-LC,T-LC)では肝機能総量は低下していた。LCではモデルにより肝葉の変形のため切除肝重量比が一定しなかったが、T-LCはヒトの肝硬変に形態的に近似していた。NORMは機能的肝再生は形態的再生に遅れた。LCでは形態的肝再生はNORMに比べて緩徐であり、機能的肝再生が形態的再生に先行した。 【考案】C-LC,T-LCはともに薬剤による肝硬変モデルであり薬剤の中断による肝細胞の機能回復を考慮しなくてはならない。しかし、本研究の結果はウイルス性肝硬変でもウイルスが完全に排除された場合に、肝部分切除による肝再生刺激により肝機能が改善される可能性が示唆される結果と考えられた。しかし、肝再生の過程はこの期間では終了していないと考えられ、より長期的な評価が必要と考えられた。
|