研究概要 |
血管内皮細胞に発現している接着分子lCAM‐1と好中球に発現している接着分子Mac‐1が結合することにより好中球から過酸化水素が産生される.そしてこの過酸化水素がsecond messangerとして働き血管内皮細胞内のcalcium上昇などの細胞内シグナルを活性化させ,さらにこの反応がmyosin light chain kinaseを活性化させることにより細胞骨格を構成するmyosinとactinのinteractionによるactinの構造変化(G-actinからF-actinへの変化)を引き起こし,血管透過性が亢進して肺水腫が起きるという一連の反応が実際に生体で起きているということを明らかするということを目的としてこの研究を進めた.そして平成9年度は以下の成果を得た. ラットにエンドトキシン(5mg/k9)をしてARDSモデルを作製した.そしてdichlorofluorescein diacetate(DCFH‐DA)を投与の後,生体肺を落射型蛍光顕微鏡で過酸化水素産生を可視化し,過酸化水素のを画像として観察・解析した.またセリウムを利用した電顕法により電頭上で過酸化水素の産生の局在を明らかにした.その結果ラツトARDSモデルでは肺毛細血管に粘着した好中球から過酸化水素が産生され,血管内皮細胞に拡散することが明らかとなった.またこのモデルにlCAM‐1の中和抗体である1A29を投与すると好中球の肺毛細血管への集積は抑制されないが,過酸化水素の産生がほぼ100%抑制されることが明らかとなった.以上の結果よりラットARDSモデルでは肺毛細血管に粘着した好中球から過酸化水素が産生され,その過酸化水素が肺毛細血管内皮細胞に拡散することが明らかとなった.またこの好中球の過酸化水素産生には血管内皮細胞に発現する接着分子lCAM‐1が関与することが明らかとなった.
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