研究概要 |
【研究の成果】 臨床肺移植の成績が安定した現在, 50%に発症する閉塞性細気管支炎Bronchiolitis Obliterans(OB)は肺移植遠隔期での最大の死因となっている.虚血,急性拒絶の遷延,慢性拒絶、ウイルス感染による気道系上皮細胞の障害等がその病態に関与していることが推測されるが免疫抑制療法や感染防止でOBの病態進行を抑制することは今だ不可能である.従来の免疫抑制療法に加えてallo-independentな病態解明、治療法の展望が望まれる.近年肺移植後のOB患者の肺組織や慢性拒絶肺の気管支肺胞洗浄液(BALF)中にPDGF TGFβ等のgrowth factorsやendothelin-1(ET-1)Tが過剰発現することが報告されている.研究代表者は肺移植後に生じるOBの病態において特に final common pathway と考えられる増殖性肺病変(fibroproliferation)とET-1との関連に注目した.我々は本学金田らによっての開発されたHVJ-liposome in vivo gene transfer systm を用いてET-1遺伝子を経気道的に肺組織に導入,過剰発現させることによってOB類似病変が誘発され,免疫組織染色でET-!の高発現が認められるという結果を得た(Ann Thorac Surg63:1562-67,1997).この動物modelは全くallo-independentな実験系であった.この成果は米国胸部疾患学会(ATS/ALA)の"Expanding stategies and targets in gene therapy"のシンポジウムで発表し,OBにおけるallo-independentの観点からの病態解明に寄与するといった評価を得た.ただこのmodelは経気道的遺伝子導入で肺組織 diffuse な導入は不可能でりpharmacological interventionによる評価は行えなかった.肺移植時における安定したHVJ-liposome 法での遺伝子導入法の確立が望まれる.そこで allo 気管移植 model(Brown-NorwayからLewis)において検討したところ増殖性気管病変は免疫抑制剤に加えてET antagonist(BQ123,TAK044)の投与により免疫抑制剤単独群に比し抑制され(unpublished data),endothelin 制御による治療法の可能性が示唆された.
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