研究概要 |
本研究の目的として,活性化した蛋白燐酸化酵素C(PKC)が,虚血再灌流時の心筋細胞内Ca^<2+>濃度に与える影響と,その調節機構としての筋小胞体(SR)及びNa^+-Ca^<2+>交換系の関与について,さらに細胞内pHへの影響についても検討を行った.実験対象として,単離した成熟ラットの心筋細胞を用いた.細胞にCa^<2+>及びpHの測定用蛍光色素である,Fluo-3とSHARF1をそれぞれ負荷した後,NaCNを加えブドウ糖を除去した灌流液による化学的低酸素とそれに続く再酸素化を行った. この結果,PKCを活性化群では,対照群に比べ虚血中のFluo-3の蛍光強度が有意に低値であった.この作用は,筋小胞体によるCa^<2+>の汲み上げを抑制しても見られたが,Na^+-Ca^<2+>交換系を抑制すると,消失した.また,PKC活性化群で,虚血中の細胞内pHの低下が有意に抑制された. これらの結果より以下の知見を得た. 1.PKCを活性化することによって,虚血再灌流時の細胞障害の原因と一つといわれるCa^<2+>過負荷が抑制された. 2.活性化PKCによるCa^<2+>過負荷の抑制作用において,筋小胞体の関与は否定的であったが,Na^+-Ca^<2+>交換系が重要な役割を果たしていることが示唆された. 3.活性化PKCは虚血中の細胞内アシドーシスの進行を抑制した.細胞内アシドーシスの抑制は,Na^+-Ca^<2+>交換系の機能を維持し,これによる細胞内Ca^<2+>濃度の調節に寄与していると考えられた.
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