研究概要 |
dynamic cardiomyoplastyの心補助能力を規定する因子の一つとして骨格筋の血流は重要で、特に広背筋弁作成時に遮断された血流の改善が必要である.臨床ではvascular delay法が用いられているが,準備期間に長時間を要するため,緊急治療には対応できず,また心移植の代替治療として考えた場合,長期駆動に耐えうる確実な血行改善ができるかどうか疑問とされてきた.本研究は,vascular delay法の諸問題を解決してdynamic cardiomyoplastyの臨床応用を確実なものとするために,生体内の線維芽細胞増殖因子であるbasic Fibroblast Growth Factor(bFGF),およびVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)遺伝子を用いた全く新しい血行改善法を開発するための基礎的実験である. 第一にdynamic cardiomyoplasty作成時に広背筋と心筋の間にbFGFを移植しその影響を検討,以下の点が明らかとなった.(1)collagen-heparinの熱架橋体を応用したbFGFのslow release systemの開発に成功した.(2)bFGF移植部では非移植部に比して肉眼的および光学顕微鏡的に線維組織が増生することを確認した.(3)factor VIII染色にて血管内皮細胞の増生と明らかな管腔形成の促進を確認した.本成果は第38回日本人工臓器学会総会(2000.9,三重)にて発表,投稿準備中である. 第二に,片側大腿動脈遮断ラットを用い,bFGF類似物質であるVEGF遺伝子による血行改善効果を検討,以下の点が明らかとなった.(1)VEGF遺伝子の局所筋注(IM)は虚血肢の血管新生を促進し,血行を改善した.(2)筋注+electroporation(IM+EP)によるVEGF導入はIMに比してより有効であった.(3)PCR法にてIMおよびIM+EP両法にてVEGF遺伝子発現を確認した.本成果は第10回骨格筋の心臓への応用研究会(1999.3,東京)にて発表,投稿中である.
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