研究概要 |
(1)モヤモヤ病患者の浅側頭動脈血管では、有意に若年性に内膜肥厚が発症していた。また、多層のelastin fiberの形成が認められ、elastin産生の亢進の可能性が示唆された。この事実は、in situ hybridisation及び、培養平滑筋細胞のelastin合成、elastin mRNAの発現を比べることにより明らかとなった。また、モヤモヤ病の血管は炎症性反応に対し、遺伝的に制御された特異的な反応性を示すとの仮説のもとに研究を行った。モヤモヤSMCでは、特にIL-1にたいする反応性が対照SMCと顕著な違いが認められ、対照SMCではIL-1はすべて遊走刺激効果をしめすのに対し、モヤモヤSMCのすべての細胞株で抑制効果を示した。この結果は、モヤモヤSMCに、IL-1bに関連する細胞内signal、あるいは、下流の分子の異常が存在する可能性を示唆している。(2)モヤモヤ病家族発症例について、詳細な家系図を作成し、MR angiographyを可能な限り施行し、疾患の有無を明らかにした。現在迄に4家系について検討を行った。最も頻度の高い家系は7人の有疾患者が明らかとなった家系である。これら家族例より、非発症例を含めgenomic DNAを抽出し、microsatellite analysisによるlinkage analysisを施行中した。これまでの検索から、HLA locus,NF-1,PDGF,PDGF receptor,FGF,elastin,Down Syndrome,tuberal selerosisとのlinkageは否定された。モヤモヤ病は、単純な優勢遺伝形式をとらず、多因子性、特に外的因子の関与が濃厚である。また、nonpenetrant carrierが多く存在することも解析を困難にしている。我々の家系では、最大7例の患者を有しており、これまで報告されたなかで、最も大きな家系である。本疾患の遺伝子解析には、家系の集積と、mappingという根気よい労力が必要である。
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