研究概要 |
1.頭蓋内胚細胞性腫瘍の細胞株の樹立は成功しなかった. 2.臨床材料を用いてTP53およびp21WAFI/CipIの発現を免疫組織化学の手法で検索した結果, (1)TP53蛋白の発現は頭蓋内胚細胞性腫瘍35例中 33例(94%)に認められた. (2)p21WAFI/CipIの発現は7/35(20%)に認められた. (3)p21WAFI/CipIの発現はジャーミノーマにおいては15例中1例も認めなかったが,絨毛癌,卵黄嚢腫瘍,胎児性癌,およびそれらを主体とする混合性腫瘍からなる所謂悪性群においては5例中4例(80%)で発現を認めた. 3.血液入手可能であった13例についてSSCPの手法によってTP53のexons2-11について変異の検索を行ったが,腫瘍におけるLOHを伴わないexons 4のgerm line mutationを認めた1例以外,全て変異を認めなかった. 4.CyclinD2の遺伝子の増幅を6/9例に認めたが,増幅の程度は最大でも3倍と軽度で,また増幅の有無と組織型との間の相関は求めなかった, 以上より頭蓋内胚細胞腫瘍の発生と治療感受性を含む生物学的性質にはTP53の関与が示唆されたが,どのような機序で野生型TP53蛋白が蓄積しているのか,また組織型によるp21WAFI/CipI発現の違いの機序が,次の課題として残された.
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