研究概要 |
(方法)放射性同位元素(Ca^<45>)を用いてピロリン酸カルシウム結晶(CPPD^<45>)を作成し,ラットの背部に作成した疑似関節腔(air pouch)にこのCPPD^<45>を注入した.経時的(0,2,6,12,24,48,120,168時間後)にこの関節腔より関節液と滑膜を採取して、関節液中に残っているCPPD^<45>、滑膜に取り込まれたCPPD^<45>の量を液体シンチレーションカウンターで計測した。関節液中の白血球数とプロスタグランジン(PG E_2)の値と関節液中に残存する結晶量、滑膜内に取り込まれた結晶量を比較し、結晶による炎症の活性化や自然消退に伴う結晶の動態について以下の結果を得た。 (結果)1.関節液中のCPPD^<45>は注入後2時間で総注入量のの34.5%,6時間で20.7%,12時間で11.0%,24時間で1.9%,48時間以後はいずれも0.5%と著明に低下していた。2.この結果は、ピロリン酸カルシウム結晶の疑似関節腔(air pouch)内投与により白血球数やプロスタグランジン(PG E_2)の値が6時間から12時間の間でピークを示し、以後24時間、48時間と有意に低下(p<0.01)し炎症の自然緩解に至る過程と密接に相関していると思われた。すなわち、炎症の起炎物質が炎症の場から除去される機構が炎症の自然緩解という過程において極めて主要な役割を担っていることを示すものと思われた。3.滑膜に取り込まれたCPPD^<45>は,CPPD^<45>注入2時間後では4.9%,6時間では65.6%,12時間後では47.0%,24時間後では28.7%,48時間以後はいずれも30%前後の値を示した。4.6時間後の滑膜と24時間後の滑膜を組織学的に検索すると,CPPD^<45>は6時間後では滑膜表面に付着しているものの滑膜組織内には取り込まれておらず、24時間ではCPPD^<45>と白血球を主体とする炎症細胞が滑膜組織内に取り込まれていた.(結論)起炎物質(CPPD^<45>)および炎症細胞を炎症の場から除去する滑膜の機構が炎症の自然寛解に関与すると推察された。
|