研究概要 |
同種腱移植のモデルとして我々が確立したラット膝蓋腱の外側1/2を移植するモデルで,移植材料の新鮮凍結保存法と凍結乾燥保存法による違い,また,放射線照射の滅菌方法による移植腱の術後経過の違いを生化学的,生体力学的に,比較検討した.新鮮凍結保存法と凍結乾燥保存法では,移植後2週間で移植腱内のコラーゲン量は減少し,その後移植後4週から12週にかけてコラーゲン新生がおこり,移植腱全体として20%から40%コラーゲン含量が増加した.凍結乾燥のほうが移植後4週で移植腱内の繊維のコラーゲンのターンオーバーが促進されていた.放射線照射を行った群では,移植腱内のコラーゲンは放射線照射を行わない群より減少した.放射線滅菌により移植腱内のコラーゲンのターンオーバーは促進され,その効果は新鮮凍結した群より凍結乾燥した移植群でより顕著であった.移植後4週の移植腱内にはレシピエントからの細胞侵入が確認されたが,凍結乾燥と放射線照射した移植腱は,コラーゲン線維間の間隙が新鮮凍結保存した移植腱に比べて大きかった.同様のモデルを用いて,移植後の膝蓋腱を採取し,その力学的特性を検討した.新鮮凍結と凍結乾燥に放射線滅菌を施した移植腱は,後者の方が移植後早期の力学的な材料特性が弱かったが,移植後両者ともその材料特性は脆弱化するため,両処理群間には優位差はなく,6週以降力学的に強度が増していた.以上の結果より,同種移植腱は,放射線照射により力学的強度が低下する問題点が指摘されたが,移植後のリモデリングの過程でホストより細胞浸潤を受けて移植腱内での基質合成が行われ,力学的強度が回復し,自家腱移植と同等の強度を得ることが明らかとなった.術後に負荷をさけるとリハビリテーションプログラムを実施することにより,ウイルス感染などに対し安全で,かつ,保存のより簡便な,凍結乾燥,放射線滅菌処理同種腱の利用が可能であることを示した.
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