研究概要 |
【目的】鶏の深胸筋腱不全断裂の修復過程におけるprocollagenα1I、α1III、TGFβ-1mRNAの発現様式を研究し、in vivoでの腱板治癒過程におけるこれらのmRNAの発現様式について研究すること. 【対象と方法】ヒトと同様に非荷重関節である鶏の深胸筋腱を用い関節面と滑液包側面とで、腱板不全断裂のモデルを作製した。切創作成後1,2,3,4,6,8,24,52週で各5羽ずつ深胸筋腱を取り出した。摘出標本よりRNA抽出後、RT-PCR法およびSouthern-hybridization法にてα1I、α1III、TGFβ-1mRNAを半分量化した。 【結果】α1Iおよびα1IIIのmRNA量は、創作成後2週をピークとする同様の発現性を示したが、常にα1Iはα1IIIより有意に高く(p<0.05)、さらにα1I、α1IIIとも関節側断裂群より滑液包側断裂群が有意に高値であった(p<0.05)。また長期経過例としての24,52週でも、コントロール群より有意(p<0.01)の出現を認めた。TGFβ1mRNAは関節包側断裂よりも滑包側断裂で高値を示した。 【結論および考察】今回の発現で(1)成鶏の深胸筋腱不全断裂では、滑液包側断裂の方が関節側断裂より高い治癒能力を持つこと。それはTGFβ1mRNAの発現に先導されること。(2)断裂作成1年後でも遺伝子レベルでの腱修復が起きている可能性を見いだした。procollagen α1I、α1IIImRNAについての要旨は第24回日本肩関節学会(1997年10月)にて発表した。TGFβ-1mRNAについては今年の日本整形外科学会基礎学術集会において発表予定である。 現在、同腱のα1Iとα1IIIのmRNAの局在を調べるためにin situ hybridization法を実験中であり、臨床における遺伝子レベルでの治療の礎を築いていく予定である。今回の実験は、細胞増殖因子の投与時期や、腱への投与によるその他の細胞増殖因子とのネットワーク(周囲細胞に及ぼす影響を含め)等、の今後の実験への礎になるものと思われる。
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