研究概要 |
本研究は、敗血症性ショックにおけるEDHFの病態生理学的意義を明らかにすることを目的とし、敗血症性ショックにおけるNitric oxide(NO)やEndothelium-derived hyperpolarizing factor(EDHF)などの内皮由来血管弛緩物質の影響を知ることで、EDHFのショック時に果たす役割について検討を行った。ラットまたはマウスにpolysaccharide(LPS)50mg/kgを腹腔内投与した。LPS投与群における腸管膜動脈リング標本をPhenylephrineにより収縮させたところ、収縮反応が有意に抑制されていた。この収縮の抑制はNO合成阻害薬であるnitro-L-arginine(10-4M)の存在下でも完全に回復しなかった。cyclic GMPは大動脈や腸間膜動脈において頸動脈や腎動脈に比し有意に上昇しているのに対し、iNOS蛋白は血管による有意差を認めず、iNOS蛋白とcyclic GMPの値の間に解離があることが判明した。eNOS knock-outマウスではアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応および過分極反応はカタラーゼにより有意に抑制された。敗血性ショックラットにおける11,12-epoxyeicosatetraenoic acid(EET)投与によっても生存率は対照群と比較し有意差を認めなかった。ラットにおけるEDHFの本態は不明であるが、11,12-epoxyeicosatetraenoic acid(EET)はその可能性は低いと思われる。我々のeNOS knock-outマウスを用いた研究では、EDHFの本態はhydrogen peroxide(H2O2)である可能性が示唆された(Journal of Clinical Investigation,2000)。しかし、ラット腸間膜においては、H2O2もEDHFである可能性は低いものと考えられる。
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