研究概要 |
揮発性吸入麻酔薬は低酸素性肺血管収縮(以下HPV)反応を抑制し,全身麻酔中の低酸素血症の一因となるが,その抑制機序は不明である.そこで,HPV反応の発現機序およびハロタンのHPV反応抑制作用と電位依存性カルシウムチャネルの関与について検討した.<方法>肺動脈送血,左房脱血,定流量再灌流方式の家兎in situ肺灌流モデルを作製した.HPV反応は吸入酸素濃度を21%から3%に切り替え誘発し,平均肺動脈圧の上昇分 (△mean PA) をHPV反応の大きさの指標とした.実験は以下の6群で行った.実験1;低酸素刺激反復群,実験2;カルシウムチャネル開口薬のBAY K 8644 0.05μM 前処置群,実験3;カルシウム チャネル遮断薬のニフェジピン10μM 前処置群,実験4;ハロタン(0,0.5,1,2,3 MAC) 吸入群,実験5;BAY K 8644 前処置,ハロタン吸入群,実験6;ニフェジピン前処置,ハロタン吸入群.<結果および考察>実験1;低酸素刺激を反復して加えてもほぼ一定のHPV反応が得られた.このことから本モデルにおいては,反復や時間経過によるHPV反応への影響はないと考えられた.実験2,3;BAY K 8644はHPV反応を40%増強し,ニフェジピンは70%抑制した.このことから,HPV反応の発現機序に血管平滑筋の細胞内カルシウムイオン濃度が関与し,その濃度の調節にカルシウムチャネルが介在していることが判明した.実験4;ハロタンはHPV反応を0.5MACから濃度依存性に抑制した.実験5,6;BAY K 8644処置において,ハロタンのHPV反応抑制作用が拮抗された.またニフェジピン処置において,高濃度ハロタン吸入によりHPV反応が抑制された.これらのことからハロタンのHPV反応抑制機序にはカルシウムチャネルが強く関与することが明確となったが,それ以外の経路も存在することが示唆された.
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