研究分担者 |
森田 隆 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (10006819)
影山 幸雄 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (10211153)
増田 均 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (80301167)
東 洋 東京医科歯科大学, 医学器材研究所, 助教授 (20134736)
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研究概要 |
陰茎勃起は1)勃起組織の本体となる海綿体平滑筋,2)陰茎海綿体に血液を流入,流出する動静脈,3)これらの平滑筋,血管の収縮弛緩を支配する自律神経系,さらに4)大脳皮質を含む高次の神経中枢という筋,血管,神経の3者が関与しておこる複雑な現象である.今回の研究ではこのうち末梢部分(1)〜3))の陰茎勃起機構を解明するため,VIPファミリーの神経ペプチドであるpituitary adenylate cyclase polypeptide(PACAP)の神経伝達物質としての役割を成熟オスウサギ陰茎海綿体標本,陰茎動静脈標本を用いてin vitroの収縮実験,および成熟オスラットのin vivoでの陰茎内圧測定実験によって検討した.in vitro収縮実験においてPACAPは陰茎海綿体平滑筋を用量依存的に持続的に弛緩させた.この弛緩反応はnitric oxide-cGMP系とは独立した反応であった.PACAPはまたアドレナリン作動性ニューロン刺激でおこる陰茎海綿体平滑筋の収縮反応をpresynapticな機構を介して増強した.また,PACAPは陰茎動静脈を持続的に弛緩させたが,静脈の弛緩反応は動脈より100倍以上低濃度からみられ,PACAPがとくに海綿体からの血液流出抵抗を下げることが推測された.VIPの作用との比較から,血管および陰茎海綿体平滑筋に対する作用はVIPとPACAPの両者に同等の親和性を持つtype 2のPACAP受容体を介しておこるのに対して,アドレナリン作動性ニューロンに対する作用はtype 1のPACAP受容体を介しておこると考えられた.陰茎内圧測定実験は再現性のよい動物モデルの作成が難しく,研究期間中にはPACAPの作用を検証するデータを得るにいたらず,さらに研究を継続中である.PACAPは陰茎の勃起および萎えを制御する非アドレナリン非コリン作動性の神経伝達物質のひとつとして,陰茎海綿体平滑筋および陰茎動静脈に存在するtype 2およびtype 1のPACAP受容体を介してVIPとは一部異なる作用をすることが明らかにされた.
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