研究概要 |
前立腺肥大症の発症には前立腺腺腫による尿道の機械的圧迫だけでなくα_1-アドレナリン受容体を介する前立腺平滑筋の収縮が関わっているが,我々はphenylephrineと各種α_1-拮抗薬を用いた等尺性収縮実験により,ヒト前立腺の収縮にはα_<1A>-受容体サブタイプが最も強く関与していることを示した.ヒトのα_<1a>-受容体のゲノムDNAには,既にC末端側において制限酵素Pst Iによる2種の制限酵素断片長多型が知られているが,α_1-受容体分子の中で細胞内情報伝達系活性化に関わるとされる細胞内第3ループにおける多型は未だ検出されていない.我々はヒトにおけるこの部位の遺伝子多型の検出を試み,それが前立腺肥大症の発症及びα_1-拮抗薬による前立腺肥大症治療の有効性に関係するか否かを検討した.手術の際に採取した前立腺組織標本よりtotal RNAを抽出し,RT-PCRによりα_<1a>-受容体細胞内第3ループをコードするcDNAを増幅,精製し,DNAシークエンサーにて塩基配列を決定し,標本間で比較した.その結果,対照群5例,α_1-拮抗薬有効・閉塞群8例,α_1-拮抗薬無効・閉塞群14例においてα_<1a>-受容体細胞内第3ループにおける変異は検出されなかった.α_<1a>-受容体ゲノムDNAのpst Iによる制限酵素断片長多型と日本人中年女性の尿道症候群との関連についての検討では,尿道症候群患者15名および正常者174名より採血を行い,ゲノムDNAを抽出した.これを鋳型として,α_<1a>-受容体蛋白の492番目のアミノ酸をコードする塩基配列を含む502塩基対の部分をPCRで増幅し,このPCR産物がPst I切断部位を有するか否かを電気泳動法により確認した.その結果遺伝子多型の相対出現頻度は正常者の群と尿道症候群患者の群で有意差は認めなかった.しかしこれらの遺伝子多型の比率は,1992年にHoeheら
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