研究概要 |
脳梗塞後の排尿反射亢進におけるグルタミン酸受容体の関与について検討するため以下の実験を行い結果を得た. 1) NMDA受容体antagonistとしてMK801,AMPA/KA受容体antagonistとしてNBQXを用いた.ハロセン麻酔下,膀胱瘻を作成したSD種雄性ラットに対し,各薬剤を静注した後に中大脳動脈を閉塞して脳梗塞を作成,膀胱容量を覚醒下に経時的に測定した. 2) MK801の静脈内投与では,覚醒下では膀胱容量の減少をウレタン麻酔下では膀胱容量の増大を認めた.偽手術では,ウレタン麻酔下,高用量のMK801が膀胱容量の増大を認めなかった. 3) 脳梗塞前投与では,NMDA受容体のantagonist投与で最初減少した膀胱容量が時間経過と共に増大した.このことは脳梗塞による膀胱容量の減少を発生の段階で抑制したものと考えられた. 4) 脳梗塞後,脳室内にカルシウム拮抗剤を投与すると,膀胱容量の増大が得られたが,最大膀胱収縮圧,残尿量に変化は認められなかった.偽手術ラットではこの効果は認められず,脳梗塞状態でカルシウム拮抗薬は中枢に作用して,排尿反射の亢進を抑制する効果があるものと考えられた. 5) NMDA受容体の発現を抑制するために,脳梗塞作成前にアンチセンスを脳室内に投与したところ,脳梗塞後の膀胱容量の減少を発生段階で抑制する事ができた. 6) 以上の結果から,NMDA受容体は脳梗塞後の膀胱容量の減少に関して重要な関与があり,これを修飾することで脳梗塞後の膀胱容量の減少を薬理学的に抑えるのみならず,遺伝治療にも応用可能と考えられた.
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