研究概要 |
分娩後ならびに妊娠中の女性の末梢血中に,胎児由来の造血前駆細胞が有意の頻度で存在することを以下のごとく証明した.1)男児を娩出した女性15例を対象として,末梢血3-9mlを採取し,これより分離した単核細胞を,エリスロポイエチンなど各種液性因子含有のメチルセルロース半固形培地にて培養した.2-3週間の培養後,形成されたコロニーを個別に回収し各々の抽出DNAから,Y染色体上のSRY遺伝子ならびに常染色体上のZP3遺伝子をnested PCR法にて同時に増幅し,アガロースゲル電気泳動後,増幅バンドの有無を検討した.胎児造血幹細胞起源のコロニーはSRYとZP3遺伝子バンドを合わせ持つ男性型を示す.分娩当日,4日後ならびに1か月後の母体末梢血からは,各々血液1mlあたり4.7±2.6個,6.3±2.7個,1.3±1.1個の胎児由来コロニーが検出された.2)妊娠14週から35週の男児妊娠女性17例を対象として,上記のコロニー解析を行った.胎児由来コロニーの頻度は3.7±2.3%で,末梢血1mlあたりの個数に換算すると4.1±3.1(rangeO〜10.0)個であった.妊娠週数と末梢血1mlあたりの胎児コロニー数との間には,有意の正の相関が認められた(R=0.58,p=0.015).現在は,妊娠4か月未満例について解析を継続中である. 以上のように,100%の純度を有し増殖可能な胎児細胞群を母体血から回収できる可能性が示された.これらの細胞を用いて引き続き染色体解析を行うことは至って容易である.よって,今回の解析システムをさらに普遍化ならびに簡便化することにより,非侵襲的な染色体異常のマススクリーニング法を確立することができると考えられた.
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