研究概要 |
薬剤耐性獲得とp53遺伝子異常発現との関連が示唆されているものの,抗癌剤耐性癌におけるテロメアやテロメラーゼの役割については明らかではない,p53遺伝子誘導アポトーシスとテロメア・テロメラーゼの変化と役割を知ることは癌遺伝子治療の臨床応用に関する新知見をもたらすと期待される.本研究では,卵巣癌におけるp53遺伝子とテロメアとの関連を明らかにすることを目的とした.卵巣癌症例のp53遺伝子変異を検索した結果,卵巣癌のp53遺伝子異常は40-50%にみられ,耐性癌でその頻度か高いことを確認した.CAP療法施行前後で腫瘍組織が採取できた上皮性卵巣癌を対象とした検討では,上皮性卵巣癌においてp53を介するアポトーシスが化学療法感受性に関与する可能性が示された.CAGpromotorを組み込んだp53組換えアデノウイルスAxCAp53を作製し,CDDP耐性細胞はp53依存性および非依存性にアポトーシス耐性に陥っていること,paclitaxelによるアポトーシスはp53非依存性シグナル伝達系を介している可能性を示した.さらに,p53遺伝子導入とCDDPとの併用療法の有効性を明らかとした.卵巣癌におけるテロメラーゼの意義について検討したが,p53遺伝子とテロメレース検出率との関連はみられなかった.また,p53遺伝子導入によるhTERTのmRNA発現ならびにテロメラーゼ活性の変化はみられなかった.本研究成績から,p53遺伝子とテロメラーゼとの関連はないものと考察された.
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