研究概要 |
「目的」加齢や閉経に伴う体脂肪分布の変化を婦人科的に観察し、それが脂質代謝などにどのような影響を及ぼしているかを検討した。「方法」有経婦人482名と閉経婦人264名を対象とした。年齢、身長、体重、BMI、閉経の有無(有経婦人:1、閉経婦人:2として登録)閉経後年数(YSM)などを調査した。TC,TG,HDL-Cを測定した。全身型DEXAで、躯幹脂肪量/下肢脂肪量(T/L)、体脂肪率、体脂肪量を求めた。1)加齢による体脂肪分布や肥満度の推移、2)高脂血症と相関する因子、3)体脂肪分布に影響する因子、4)運動の体脂肪分布に及ぼす影響、などを検討した。「成績」1)T/Lは年齢と性の相関を示したが(r=0.464,P<0.001),肥満度の指標であるBMI(r=0.125),体脂肪率(r=0.168)および体脂肪量(r=0.04)はT/Lほど年齢と相関を示さなかった。2)単回帰分析で年齢、閉経の有無、体脂肪率、体脂肪量およびBMIいずれも高脂血症の存在と相関したが、重回帰分析で高脂血症の有無と相関した因子はT/L(標準回帰係数=0.254,P<0.0001)のみであった。3)体脂肪分布に影響を及ぼす因子を重回帰分析で求めた。T/LとBMIは0.511(標準回帰係数,P<0.0001),年齢は0.319(P<0.0001),閉経の有無は0.109(P<0.05)であり、それぞれ正の相関を示した。4)閉経運動群(n=54)と対称群(n=126)で年齢、身長、体重、閉経後年数、BMIおよび血清脂質に差を認めなかったが、運動群でT/Lと体脂肪率が対照に比較して有無に低かった(それぞれP<0.001,1.05)。「結論」加齢と閉経はそれぞれ独立して上半身型体脂肪分布への移行に関与している。加齢も閉経も体脂肪分布に影響を及ぼすが、閉経の方が加齢よりも強いという報告がある。われわれの報告と一致しない。このような相違には人種差、検討症例数、対象の年齢分布、研究方法、解析方法、などの違いが関係しているものと思われる。加齢や閉経によりなぜ体脂肪分布が上半身型へ移行するかは今後の検討課題であるが、(1)加齢による運動量の低下や筋力の低下、(2)エネルギーの摂取と消費とアンバランス、(3)卵巣ホルモン(エストロゲン)の低下、(4)男性ホルモンの相対的高値、などが関与しているものと考えられる。
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