研究概要 |
[目的]子宮頚癌において、転移が疑われる組織のHPV DNAを検索し、HPV DNAの存在と転移との関係を臨床経過に照らして前方視的に解析し、転移診断への有用性を検討た。 [対象と方法]治療開始前に原発巣のHPV DNAを検索しえた293例を対象とした。HPV DNA検出およびその型判定のため、新鮮標本を用いてpolymerase chain reactionを行った。 [成績]250/293例(85.3%)の原発巣にHPV DNAが検出された。組織別陽性率は、扁平上皮癌89.9%,腺扁平上皮癌93.8%,腺癌51.4%であり、前二者は後者に比し有意に高率であった(p<0.001,p=0.002)。16型は扁平上皮癌に,18型は腺癌に高率であった。52%は型を特定できなかった。治療開始後、HPV DNA(+)250例中113例から採取された489検体(リンパ節、肝、肺)については、転移(+)55検体ではすべてにHPV DNAが検出され、さらに転移(-)434検体でも12検体(2.8%)にHPV DNAが検出された。検出されたHPV DNAの型はすべて原発巣のそれに一致した。HPV DNA(-)43例中29例から採取された154検体については、転移(+),転移(-)にかかわらずHPV DNAは検出されなかった。転移(-)であってもHPV DNA陽性の検体は、その患者の臨床経過に照らしてみると、その時点ですでに組織的に認識できない微小な転移があったものと判断された。 [結論]子宮頚癌において、HPV DNAの検索は潜在的転移の診断に有用であり、そのような患者では、その検体採取部位に対する治療が考慮されるべきである。
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