研究概要 |
性索間質性卵巣腫瘍である顆粒膜細胞腫とセルトリ・ライディク細胞腫におけるインヒビン/アクチビン・サブユニットの局在と発現および患者血中インヒビン濃度の術前、術後の変化を検討した。顆粒膜細胞腫においては、αサブユニットの局在は腫瘍細胞の一部にみられ、βA,βBサブユニットの染色はともに強く認めた。セルトリ・ライディク細胞腫では、αサブユニットの局在はライディク細胞に認められ、βAサブユニットはセルトリ細胞に染色を認め、βBサブユニットの局在は両細胞にみられた。Northern blot解析により顆粒膜細胞腫およびセルトリ・ライディク細胞腫に、インヒビンα、βA,βBサブユニットmRNAが発現していることが明らかになった。また、患者の術前血中インヒビンA,インヒビンB濃度は著明に上昇していたが、術後急速に低下した。以上のことより、インヒビンが性索間質性卵巣腫瘍の腫瘍マーカーとして臨床応用できる可能性が示唆された。さらに、上皮性卵巣腫瘍である漿液性、粘液性腫瘍の良性、境界悪性、悪性腫瘍におけるインヒビアン/アクチビン・サブユニットの免疫組織学的局在を検討した。漿液性腫瘍では、いずれの組織でもαサブユニットの局在を認めなかったが、βA,βBサブユニットの染色を腫瘍細胞に認めた。一方、良性および境界悪性粘液性腫瘍では、α,βA,βBサブユニットの局在を腫瘍細胞に認めたが、粘液性腺癌ではαサブユニットの染色を認めず、βサブユニットのみの局在を認めた。以上のことより、インヒビン、アクチビン産生の偏奇が上皮性卵巣腫瘍の悪性化と関連することが示唆された。
|