研究概要 |
本研究は、黄体機能を血管構築の面からとらえ、黄体形成、退行過程での微小循環動態の変化を解析することを目的とした。in situ digital microfluorographyを用いたPMSG-hCG過排卵誘起後の未熟ラット黄体の検討では、毛細血管網密度は、hCG投与前の血管密度を1とすると、hCG投与24,48時間後は0.782,1.683、7日後は2.051であった。血管径に関してはhCG投与48時間後は投与前の約70%であった。さらに、hCG投与24時間後ならびに14日後にシャント血管が観察された。これらから、黄体機能が活発化する排卵後48時間には血管網は構築が完成し、ステロイド産生のための生体の反応が示唆された。次に黄体微小循環の変化とFR産生の関係を知るために、黄体退縮因子であるPGF2αを投与、黄休退縮を惹起し、PGF2α投与後のフリーラジカル(FR)の産生と微小血管構築の変化を観察した。PGF2α投与15分で黄体実質部分でのFR産生は有意に増加した。微小循環動態については、PGF2α投与15分後には明らかな変化は認められなかったが、48時間後に毛細血管網密度が低下し、シャント血管も観察された。これらのことから、黄体実質からのFRが微小循環の構築を変化させていると考えられた。また、ヒトにおける、パワードプラを用いた黄体血流と機能の関係の検討では、血流の減少が機能低下の直接的な原因にはなっていないことが示唆された。以上から、黄体実質から産生されるFRがプロゲステロン産生の低下である黄体の機能的退縮を引き起こし、さらに引き続いて微小循環の崩壊,構造的退縮をもたらすと考えられた。
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