研究分担者 |
土屋 慎一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70276327)
篠原 雅美 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10276321)
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
小林 紀子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276325)
黒島 正子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20255508)
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研究概要 |
精子核のcell-free脱凝縮実験系として(1)dithiothreitol(DTT)及びTritonX-100ないしlysolecithin-Tris塩を用いたcell-free実験系,(2)同期した卵を大量に排卵する両生類の卵の抽出液を用いたcell-free実験系の2系統の脱凝縮系を作製し,ヒト精子核膨化に関与する条併を検索し,又脱凝縮過程における核変化および受精過程においてヒト精子核膨化機構に関与する精子核タンパクについて検討した。 塩の存在(Na^+で1.0M以上),細胞膜の除去,ジスルフィド結合還元という条件を満たす,0.05%lysolecithin-5mM DTT-1.0M NaCl Tris溶液によるcell-free精子核脱凝縮実験系を用いて成熟精子核におけるヒストンの存在を示し,また抗ヒストン抗体を用いて蛍光下で膨化精子核の経時変化を検討した。 ヒト精子は,細胞膜の除去と核蛋白であるブロタミンのジスルフィド結合の還元のために5mM DTT-1% Triton X-100のTris溶液で処理して用いた。nucleoplasminを含むXenopus卵抽出液では比較的緩徐に脱凝縮を生じたが,0.5M NaClに調整したXenopus卵抽出液では極めて急速に脱凝縮に至った。nucleoplasminを介する脱凝縮は塩濃度に影響を受け,又精子形態により脱凝縮過程に相違があることが示唆された。 ヒト精子核を上記 in vitro 脱凝縮系で膨化させ,35%酢酸溶液により塩基性核蛋白を抽出した。抽出蛋白に対し,抗ヒトヒストンH2Bポリクローナル抗体を使用したWestern blottingによる検索では,精子形成過程で核蛋白のほとんどがプロタミンに置換されるという過去の報告に反し,相当量の抗ヒストンH2B抗体に結合する蛋白バンドが検出された。 抗ヒストンH2B抗体およびFITC標識2次抗体を使用して蛍光下で精子核の脱凝縮過程を検討した。脱凝縮に伴い,結合可能なヒストンの量に変化があったことが示唆された。しかし,精子形態により膨化に差を認め,tapering spermでは膨化の径の変化が有意に少ないことが判明した。 精子核はその成熟過程で核蛋白がヒストンからブロタミンに置換され形態的機能的にコンパクトとなるが,射出精子核にも相当量のヒストンを含有しており,また脱凝縮過程でヒストンの結合性に変化を生じることが示唆された。
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