研究概要 |
卵巣癌の全ての組織型に適応可能な、簡便で、再現性が高い、分化度診断法を確立することを研究の第一目的とした.病理組織学的因子の検討から、以下の3つの独立因子を抽出し、以下の如く点数化した.a)構造異型:腫瘍組織中のpredominantな構築により、腺管状:1点、乳頭状:2点、充実性:3点; b)核異型度:異型の最も強い部分の評価により、軽度:1点,中等度:2点,高度:3点; c)核分裂数/10HPF:0-9:1点,10-24:2点, 25以上:3点.病理組織学的分化度は、以上3項目を合計して、3-5点:G1, 6-7点:G2, 8-9点:G3と診断. 1)新分化度の予後因子としての有用性:著者らの考案した新分化度は,FIGO I/II期,III, IV期、T1-3に層別化しても、生存期間を指標とした場合、予後因子として機能した. 2)化学療法の効果との関連性: a)病理組織型と化学療法の効果との関連性:組織型によりCDDP感受性(漿液性,移行上皮,類内膜)とCDDP抵抗性(明細胞,粘液性)の2群に分けられる. b)新分化度と化学療法の効果との関連性:CDDP感受性群に於いて,分化度による初回奏効率(CR+PR)に有意差は認められない.しかしながら,G3(high grade)腫癌では,初回CDDP併用化療に於けるCR率が低く,PFIが短く,再燃・再発率が高い.そして、再発時のsecond line CDDP併用化療に対する奏効率が低い.即ち,獲得耐性の頻度が高い.その結果が、G1-3の生存期間に於ける有意差に反映されている.そして、G3腫瘍の予後は5生率11%と不良である. 3)新分化度と後腹膜リンパ節転移との関連性:根治手術可能なT1症例に於いて、新分化度はリンパ節転移有無の指標として概能した. 成績中にも示したが、本分化度診断法は、方法が簡便で、判定に時間を要せず、再現性も高い.今後、治療法の異なる他施設での追試をする価値があるものと考えられる.また、米国婦人科癌研究班(GOG : Gynecologic Oncology Group)で追試予定である.
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