研究概要 |
平成10年度における研究実績は,大別して1)自覚的垂直位測定装置の改良,2)固視機能測定装置の改良,3)測定の実施の3項目に分類できる。 1. 自覚的垂直位測定装置の改良 平成9年度に適用した自覚的垂直位測定装置は,測定データの表示が突然消えたり測定が中断するという不安定さがあったので,刺激プログラムの設定を自由にし,画面表示された測定データの手動式記録から,画面表示されたデータを全てコンピュータ内に記録し,随時読み出して解析できるシッステムに改良した。 2. 固視機能測定装置の改良 従来の固視機能測定装置は,地磁気センサーを用いてその変化量を測定する方法であったが,磁気を帯びた周囲の装置の影響を受ける恐れがあったので,併設したジャイロセンサーによる測定も可能とし,固視と自覚的垂直位の関係を正確に解析できるように改良した。 3. 測定の実施 上記のような改良を加えた装置を用いて測定した自覚的垂直位の年齢的変動をみる研究に着手し,現在まで得られた成績の概要から自覚的垂直位も小児期に発達し,加齢現象を経過することが明らかになった。すなわち,正常成人はほぼ1゚以内の誤差であるのに対し,8〜10歳では3゚と大きく,また高齢者では正常成人と比較して統計的に有意の差を示さなかったが,大きくなる傾向を示し,また個体差が大きいことが特徴的であった。なお,自覚的垂直位測定中の頭部動揺は,小児と高齢者で大きく,眼運動による追跡能の低下を示唆した。
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