研究概要 |
べーチェット病患者血清中の抗網膜自己抗体の一つは抗網膜HSP60抗体であり、自己抗原としての網膜HSP60について詳細を既に報告した(T.Tanaka,et al. Common anntigenicity between Yersinia enterocolitica-derived Heat-shock protein(HSP)and the retina,and its role in uveitis.Ophthalmic Res.28,284-288,1996.).また患者は口腔内に再発するアフタや抜歯を契機に眼発作が起こるため、口腔内に常在する溶連菌が重要であると考えられてきた。そしてSangius溶連菌HSPに対して特異的なγσT細胞が検出されたとの最近の報告もある。エルシニア、溶連菌、網膜芽細胞腫および網膜のHSP60に対する免疫応答を検討したところ、抗網膜HSP60ならびに抗溶連菌HSP60に対してべーチェット病では著しい抗体価の上昇を示した.ところで網膜芽細胞腫よりHSPを抽出している過程において,この腫瘍が臨床的に温熱感受性に富む理由のひとつに細胞内のHSPの動態が関与していることも判明し酸の配列を推定した.その結果,牛網膜および溶連菌HSP60について約200残基の内部配列を決定することができた.両者の配列は47%の割合で相同することが解った.網膜のそれはヒトの配列と99%相同した.牛網膜HSP60には患者のリンパ球が著しく反応するエピトープや実験的なぶどう膜炎を惹起するエピトーブが含まれていることも解った.べーチェット病の発症機序を分子相同性の観点から検討する上で,網膜と溶連菌のHSP60は重要と考えられた.さらにこの結果をもとに合成ペプチドを作製して免疫学的,分子生物学的に検討した.具体的には幾つかの合成ペプチドを作製し,リンパ球増殖試験にて患者のリンパ球が反応するエピトープを検索した.さらにLewisラットにペプチドをFreundの完全アジュバント,百日咳菌とともに接種し,ぶどう膜炎が惹起されるか否かについて検討した.合成ペプチドに対する免疫応答を調べた結果ではリンパ球は網膜と溶連菌HSP60の221番目から235番目の残基LLSEKKISSVQSlVPとLITDKKVSNIQDILPに著しい反応を示した.実験的に軽度のぶどう膜炎がその網膜の合成ペプチドLLSEKKISSVQSIVPを
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