研究概要 |
1. 羊膜組織と保存:新鮮羊膜では、コラーゲン層、上皮細胞、基底膜を認め、PI染色では約80%の細胞が生存していた。冷凍保存した羊膜では、上皮細胞の変性を認め、PI染色で10-20%の上皮細胞のみが生存していた。 2. 動物モデルでの組織:白色ウサギの結膜切除後、ヒト羊膜を縫着して組織変化をみた。術後3日目には、羊膜は強膜上に生着し、結膜は再生途中であった。7日目には、再生結膜上皮が延び、羊膜上皮細胞も残存していた。3週後には、羊膜上皮細胞は消失し、一部に細胞浸潤を認めた。 3. 臨床例での組織学的検討:羊膜移植後に再手術を要した14例中3例に、羊膜と思われる組織を認めた。羊膜は元の厚みを保っており、浸潤細胞もあまり認められなかった。 4. 細胞生物学的検討:成長因子の関与について解析するため、bFGF,HGE,TGF-bの免疫染色と、ELISA法による定量を行った。bFGF,HGF、TGF-b3は主として上皮細胞質内に、TGF-bl、b2は、び漫性に分布していた。bFGF,HGF,TGF-b1,TGF-b2の羊膜内の濃度は、各々5.31±3.04,14.2±6.0,2.45±1.45、0.56±0.45ng/gであったが、70日間の冷凍保存により、17.7%(bFGF),23.5%(HGF),22.4%(TGF-bl)まで減少した。 5. 培養上皮細胞に対する影響:ホモジェナイズした羊膜を、培養結膜上皮細胞と結膜下線維芽細胞に加え増殖速度を比較した。結膜上皮細胞、線維芽細胞の増殖は共に促進された。 6. 羊膜上への角結膜上皮細胞の培養:羊膜上に結膜上皮細胞を培養する際の条件、培養細胞の形態的特徴について検討した。培養にSHEM培地を用い、数日後にRCGM培地に変えると、約2週間ほどで培養シートを得ることができた。形態的に培養上皮細胞は多層化し、電子顕微鏡により、正常に近い細胞間構造を形成していることが認められた。
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