研究概要 |
〈目的〉cadherinはカルシウム依存性の細胞間接着分子であり,細胞内のcateninと結合し接着機能をはたすが,これらの分子の経芽腫での研究報告は見られなかった.そこで今回我々は神経芽腫に於けるcadherin,cateninの発現について培養細胞株,および手術にて得られた腫瘍組織を用いて実験を行った. 〈実験材料及び方法〉実験には神経芽腫の培養細胞株5種類(SK-N-SH,NB39,IMR32,SK-N-MC,NB1)とPNET 1種類(Muraoka)を使用した.また手術にて得られた11例の腫瘍組織も用いた.実験方法はcadherin,cateninの蛋白レベルでの解析にWestern blot法を行なった.また,N-cadherinの発現していない培養細胞株に対してはmRNA解析のためのNorthern blot法,N-およびp-cadherinの免疫染色法を行った.培養細胞のcadherinの接着機能の解析にはaggregation assayを行った. 〈結果〉培養細胞株のWestern blotでは3株でN-cadherin,5株でcadherin-6および3株でcadherin-11が発現していた.SK-N-MC,NB1ではN-cadherinは発現せず,SK-N-MCにはcadherin-11が発現していた.PNETのMuraokaではP-cadherin,cadherin-6およびcadherin-11を発現していた.しかし,NB1ではcadherinおよびcateninの発現も見られなかった.また蛋白レベルでN-cadherinの発現のない細胞株ではmRNAも見られなかった.手術にて得られた腫瘍組織を用いた実験では11例中全例にN-ccadherinおよびcadherin-11の発現が見られたが,cadherin-6およびcadherin-8については発現の増強または減弱した症例が見られた.しかしこれらの臨床材料のcadherinの発現パターンと予後との関連はなかった. 〈結語〉神経芽腫およびPNETの培養細胞株ではN-cadherin,cadherin-11およびcadherin-6のうちいくつかを発現するもの,cadherin-11のみを持つもの,cadherinを持たないもの,P-cadherinを持つものに分類された.手術にて得られた腫瘍組織では全例にN-cadherin,cadherin-11の発現が見られ,cadherin-6およびcadherin-8の発現は各症例で増減が見られたものの予後因子との関連はなかった.
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