研究概要 |
本研究では,p26.0/p24.8の細胞内チロシンリン酸化反応を指標に,歯周病原生細菌のLPS刺激によるB細胞内シグナル伝達機構の詳細と特異性を明らかにすることを目的とし,構造的に異なる種々のLPSあるいはlipid Aの刺激によるB細胞活性化機構について比較検討を行った.その結果,以下の成績を得た. 1. C3H/HeNマウスB細胞に対しては,供試したいずれの歯周病原生細菌のLPS(Pg LPS,Aa LPS,Pi LPSおよびEi LPS)においても,EcLPS同様,p24.8/p26.0を含む細胞内基質タンパクのチロシンリン酸化反応が誘導されることが明らかとなった. 2. 一方,C3H/HeJマウスB細胞に対しては,lipid A部分の構造がEcLPSとは異なるPg LPSあるいはPi LPS刺激では細胞内チロシンリン酸化反応が認められ,Ec LPS類似のlipid A構造を有するAa LPSおよびEiLPSでは誘導されなかった. 3. 精製lipid Aを用いた実験結果およびpolymyxin B処理の成績から,LPS刺激後のB細胞内チロシンリン酸化を誘導するLPSの活性本体は,そのlipid A部分にあることが示唆された. 4. チロシンリン酸化反応を抑制することによって同時にB細胞の増殖活性が抑制されることから,細胞内チロシンリン酸化反応は,B細胞の増殖活性に必須の経路であることが示唆された. 5. チロシン脱リン酸化系はLPS刺激後のB細胞内のシグナル伝達には著明な影響を示さないことが示唆された. 6. セリンスレオニンリン酸化反応を抑制することによって,細胞内チロシンリン酸化反応は影響されないものの,B細胞の増殖活性は抑制されることから,LPS刺激後のB細胞内のシグナル伝達系には,チロシンリン酸化反応同様,セリン/スレオニンリン酸化反応も関わっている可能性が示唆された.
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