研究概要 |
ブタ歯胚及びラット切歯,臼歯歯胚のエナメル蛋白について、in-situハイブリダイゼーション,免疫化学および免疫組織化学を用いて検索し、以下の結果を得た。 1. ブタ歯胚のエナメル芽細胞におけるエナメリン,アメロゲニンの発現は,分化期後期から移行期まで起こっているが,成熟期では認められなかった。一方,ラット切歯と臼歯歯胚では,成熟期にも発現が認められた。この結果から,エナメル質の成熟過程におけるエナメル蛋白の役割は,ブタとラットで異なっている可能性が示唆された。 2. 歯根の形成過程におけるエナメル蛋白の発現について検討し,ラット切歯と臼歯ではへルトビッヒの上皮鞘由来と考えられる歯根膜の細胞と,セメント細胞の一部のゴルジ装置にアメロブラスチンが局在することが明らかになった。一方,ブタ歯胚の歯根形成に関連して,アメロゲニン,エナメリン,シースリンのいずれの発現も認められなかった。この結果から,歯根の形成過程におけるエナメル蛋白の役割は,ブタとラットで異なっている可能性が示唆された。 3. エナメル蛋白分解酵素の一つであるエナメリシンは,ブタ歯胚のエナメル芽細胞では分化期後期から成熟期前期まで発現しており,特に移行期から成熟期にかけて基質形成期より強い発現が認められた。また、エナメルセリンマトリクスプロテイナーゼ1(EMSPl)も移行期から成熟期にかけて主に発現しており、この結果から,移行期は成熟期における基質蛋白の脱却のために,積極的に機能していることが明らかになった。
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