研究概要 |
P. gingivalis ATCC33277株のエンベロープを界面活性剤で可溶化させた画分より2種類のアルギニン特異的プロテアーゼ(RGP-A,RGP-B)と1種類のリジン特異的プロテアーゼ(KGP)を精製した.3酵素ともに還元剤による活性化が見られた.RGP-Bはグリシルグリシンによる活性化が著しく,KGPはEDTAで活性化された.RGP-A,RGP-BともにPCMB,TLCK,NEM,EDTA,ロイペプチン,E64,アンチパインで阻害された.一方KGPはPCMB,NEM,TLCKで阻害を受けた.RGP-AとRGP-Bの分子量はともに43kDaでKGPは48kDaであった.RGP,KGPの合成発色基質への活性はアルギニンとリジンをP-1部位に持つものに限定されていた.ヘモグロビンをRGP-Bで処理するとほぼ完全に分解された.さら.にこの分解産物をセファデックスG-100ゲル濾過で分別した一画分に,ヘムを除いて誘導した静菌状態のP.gingivalis の増殖を促進させる作用を確認し,RGP-Bはヘモグロビンから鉄を供給する機能を分担していることが示唆された. P.gingivalis は血液平板で発育すると19kDaの蛋白質の発現が顕著で,そのN末端アミノ酸配列を調べるとRGPのHGP15ドメインによってコードされているらしいことが考えられる.HGPl5蛋白質をHGP15-overproducing大腸菌から精製し,これがpH依存様式でヘモグロビンと結合することまたHGPl5の抗血清は19kDaのヘモグロビン結合蛋白質と反応することが判明した.P.gingivalis の野生株はヘモグロビンの吸収能を示し(pH依存性),黒色色素欠損変異株ではHGP15関連蛋白質の産生が見られず,ヘモグロビン吸収能もなかった.これらの結果からHGPl5とヘモグロビン蓄積の間に強い関連があると考えられる.
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