研究概要 |
口腔顔面領域の血管は交感神経により血管収縮、副交感神経により血管拡張反応を起こす。特に副交感神経血管拡張神経は味覚、痛覚らの体性感覚神経の刺激により反射性に興奮がおこり、口唇、口蓋、舌らの血管を拡張させる。本研究では種々吸入麻酔薬の体性-副交感神経血管拡張反応に対する効果を検討した。ネコをケタミン(30mg/kg。im)により入眠後、α-クロラロース(30mg/kg,iv)とウレタン(100mg/kg,iv)で麻酔し、筋弛緩薬(パンクロニウム、0.4mg/kg、後0.2mg/kg/h)投与後,人工呼吸下(50%酵素、50%空気)で実験を行った。副交感神経の興奮は体性神経を求心性に刺激して反射性に起こした。即ち舌神経を露出後切断し、中枢性に電気刺激(30V、10Hz、2ms、20秒)をして反射性に副交感神経血管拡張繊維を興奮させ下顎口唇、口蓋に血管拡張反応を起こし、その反応をレーザードプラー血流計で測定した。この血管反応に対する吸入麻酔薬(イソフルラン、セボフルラン、ハロセンら)や笑気等の麻酔薬がどのような効果をもたらすかを検討した。イソフルラン、セボフルラン、ハロセンの吸入麻酔薬は1MAC(minimum alveolar cocentration)の濃度で反射性副交感神経血管拡張反応をそれぞれ86.2、69,2、66.6%抑制した。各吸入麻酔薬とも吸入直後に抑制がみられ、30分近くで最大抑制を示した。また吸入を解除するとその抑制は20-30分で完全に消失する。イソフルランによる抑制は中脳部位での除脳では殆ど影響を受けない。γ-アミノ酪酸(GABA)受容体拮抗薬のプクロトキシンによりイソフルランの抑制は殆ど回復した。これらの結果は吸入麻酔薬の体性-副交感神経血管拡張反応に対する抑制はGABAが重要な働きをし、その作用部位は脳幹レベルであることが推定された。
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