研究概要 |
グルタミン酸レセプターの機能的役割を解明する目的で、グルタミン酸レセプターサブタイプの分布と機能の関連を、顎口腔領域に関連する三叉神経節細胞を中心に検索をおこない、以下の成果を得た。 1) グルタミン酸レセプターの機能: ラット三叉神経節では、GluR1-4,5,6,7,KAl&2のすべてのグルタミン酸レセプターサブユニットが発現しているが、機能的には、GluR5/KA-2のheteromericなサブユニット構成をとっていることを明らかにした(Sahara et al.1997)。引き続いて、AMPA型グルタミン酸レセプターでは、その立体構造から1分子のアゴニストがそれぞれのサブユニットに結合すると考えられているが、実験の結果、2分子のアゴニストの結合によりチャネルが開くことが明らかとなった(Clements et al.1998)。グルタミン酸レセプターは4-5つのheteromericなサブユニットが集まって機能を発揮していることから、サブユニット間で負の協調作用を示す可能性が考えられる。中枢神経系の抑制性伝達物質であるGABAについても機能的に何分子のアゴニストが結合するかをGABA_Aレセプターで同様に検討し、2分子のアゴニストの結合によりチャネルが開くことを明らかにした(Jonesetal.1998)。 2) 舌表面に発現しているグルタミン酸レセプターサブユニットの同定: mGluRサブタイプ(mGluR1,2/3,4,5,7)に特異的な抗体を作成し、ラット舌表面においてその分布を検索した。光顕では味細胞にmGluR4が強く発現していたが、電顕により詳細な分布を検討すると、mGluR4は、細胞内のER表面に存在し、細胞膜表面には存在しないことが明らかとなった。したがって、mGluR 4自体が"うまみ"の受容体、あるいは、味細胞でシナプス前抑制を行う可能性は低いと考えられる。 3) 嗅覚系におけるグルタミン酸レセプターの役割: 嗅球においてもmGluRサブタイプに特異的な抗体を用いてその分布を検討し、サブタイプに特異的な分布パターンを認めた。一方、Slice標本を用いた生理学の実験により、主嗅球の情報処理では、グルタミン酸レセプターのNMDA型が重要な役割を果たしていることを明らかにした(Shoppa et al.1998)。
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