研究概要 |
ストレス時などにMethionine-Enkephalin(Met-Enk)は副腎髄質クロマフィン細胞においてニコチン受容体刺激に伴ってカテコラミン(CA)と同時に放出されることが知られている.今回の研究はこのMet-Enkの作用と動態について検討することを目的とした. クロマフィン細胞のニコチンで長時間刺激するとCA遊離は一過性であったのに対しMet-Enkは持続的な遊離が認められた.近年クロマフィン細胞からCAを遊離させることが見いだされたpituitary adenylate cyclase-activating polypeptide(PACAP)はCA,Met-Enkともに持続的な遊離を引き起こした.長時間刺激後の細胞内CA含有量はACh刺激では遊離に伴う減少を引き起こした.長時間刺激後の細胞内CA含有量はACh刺激では遊離に伴う減少を補うにとどまったがPACAP刺激では更に増加していた.PACAP刺激によるCA遊離は細胞外Ca^<2+>を必要としたが、電位依存性Ca^<2+>チャンネル抑制剤A-キナーゼ抑制剤、C-キナーゼ抑制剤で抑制されなかった。クロマフィン細胞におけるCA遊離に対する種々のオピオイドアゴニストの作用について検討したが,Met-Enkの親和性の高いμおよびδ受容体の作用薬はCA遊離に影響せず,むしろκ作用薬のdynorphinA(1-13)等が有意な抑制を示した.この抑制はκ特異性または非特異性オピオイド拮抗薬によって拮抗されなかった. これらの結果より,副腎クロマフィン細胞からのCA遊離はMet-Enkを介したauto-regulationを受けず,dynorphinを介した別の系によって制御されていること,短期間の刺激では主としてAChがCA遊離を引き起こし,長時間刺激ではAChの持続的遊離やMet-Enkの産生にPACAPが重要な役割を果たしていることが示唆された.Met-Enkの役割については今後さらに検討が必要である.
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