研究概要 |
マウスを未変性のPorphyromonas gingivalis線毛で免疫して多数のモノクローナル抗体(mAb)を樹立し、各mAbの反応特異性を解析したところ,全てのmAbは線毛ポリマーには反応するがモノマーには反応を示さなかった。モノマーの線毛サブユニットを免疫した場合には線毛モノマーに反応性を示すmAbが樹立されたが,これらのmAbは未変性線毛に全く反応を示さなかった。以上より,P.gingivalisの線毛では、未変性のポリマーとそのサブユニットモノマーとでは抗原性が大きく異なること、そして立体構造依存性B細胞エピトープが圧倒的にimmunodominantである事が定量的に示された。同様の手法を他のタンパク質抗原に適用して、immunodominant B細胞エピトープが立体構造依存性であることは、安定な高次構造を保有するタンパク質における一般的な現象であることが示唆された(以上,平成9年度)。P.gingivalis線毛2量体を認識するmAbの中から,同一もしくは近接するエピトープを認識すると考えられた2クローンを選択し,これらのmAbが認識するエピトープ構造の解明を目的として,phage-displayed random peplide libraryを用いてmAbが認識する立体構造を模倣するペプチドの探索を試みた。Panningの繰り返しによってmAbに反応性を示す複数のファージクローンが得られたが,対照のmAbとの反応性や種々の競合阻害試験の結果に基づいて,最終的に1 mAbに対する1ファージクローンの特異性が確認された。挿入ペプチドのアミノ酸配列を調べたところ,線毛サブユニットの260番目からのアミノ酸配列とごく部分的な相同性を認めた。平行して,線毛サブユニットの遺伝子DNA配列から1分子中に3カ所の存在が予想されるシステイン残基の存在様式をタンパク化学的に解析した。1分子中3残基のシステインが存在が確認され,うち2つがジスルヒド結合を形成することが明らかになった。
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