研究概要 |
実験動物としてICRマウスを,歯周病原菌としてA.actinomycetemcomitans(Aa),P.gingivalis(Pg),F.nucleatum(Fn)を用い,マウスの腹腔に同一吸光度を示す上記細菌の感染を行い,頚動脈から血清,腹腔洗浄液から細胞画分と上清を得た。また生菌を一週間に1回3回投与して生菌免疫マウスを作成した。腹腔細胞画分から総細胞数,細胞種の測定を,血清と腹腔洗浄液上清は抗体価とサイトカインの値の測定を行った。また菌の投与後に誘導されるγ/δT細胞のTCR種についてRTCR法にてサブセットを測定した。 一次反応についてはAaは腹腔へ細胞をよく誘導し,正常時の約10倍まで増加させた。pgは約3倍の増加にすぎなかった。初期反応においてPgでは好中球の占める割合が低かった。免疫誘導期ではリンパ球が増加したが,Fnではマクロファージの増加が著明であった。血清および腹腔洗浄液はIgMが1〜2週で優位だったが,3週目ではAa,PgではIgG優位となった。FnはかわらずIgM優位であった。初期における炎症性サイトカインTNF-α,IL-6,IL-1βは24時間以内に産生され,TNF-αは血清中に優位に,IL-6は血清と腹腔洗浄液の両方に,IL-1βは腹腔洗浄液に優位であった。免疫誘導期ではAa投与後IL-10,IL-4,IL-6が誘導されTH2の優位性を示した。Aa,Fn投与では血清中でIFN-γが初期および誘導期に検出されるが,腹腔ではFn投与が高い値を示した。 生菌免疫マウスでは細胞数は一次反応の更に2〜3倍に増加するが,好中球の反応は半ばで抑制され,リンパ球,マクロファージの増加が起こった。抗体はPg免疫マウスではIgG優位であったが,Fn免疫マウスではIgM優位であった。サイトカインは一次反応に似ていたがIFN-γの反応が高かった。Fnの一次感染で誘導されるγ/δTCRのサブセットはγ6,δ1であった。
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