研究概要 |
レジン接着に及ぼす象牙質歯髄複合体の病態生理の影響を解析することを目的として、ビーグル犬の生活歯を用いてin vivoおよびin vitroにて象牙質楔状欠損窩洞を形成しレジン接着を施し,術直後,術後3週間後,術後3ヶ月後に接着試料を採取し,微小引張強度測定法(MTBS法),SEM,TEM,XMAおよびSIMSを用いてレジン接着の詳細を検討した。 その結果,in vivo術直後にはクリアフィルライナーボンドII(LBII)およびフルオロボンド(FB)ともに30MPa以上の高い接着強度を発揮しており,in vitroの接着強度とも有意差はなかったが,術後3週間後には20MPa以下と有意に低下し,術後3ヶ月後には比較的安定していた。また接着界面の微細形態後は術直後には比較的明瞭であったが,3ヶ月後にはほとんど消失していた。さらにレジンタグ形成は大きく阻害されていたが,チュブリン抗体陽性を示す象牙細管内突起様構造物が多数突出していることが免疫組織学的検索により示唆された。SIMS検索の結果からフルオロアルミノシリケートフィラー配合レジンであるFBの3ヶ月後の接着試料の表層においてフッ素イオンの浸透が確認された。 また齲触症の象牙質接着に及ぼす影響についてもin vitroにて詳細に検討した結果,caries-affected dentinにおいてSingle Bondの接着強度が有意に低下することが明らかとなった。さらに,caries-infected dentinに対するセルフエッチングおよびウエットボンディングシステムの接着性を検討した結果,いずれのシステムも20MPa以下であることが判明したが,一部のシステムで象牙細管に残留した齲触細菌をレジンで封鎖することが可能であることが明らかとなり,接着性レジンを用いたシールド・レストレーションの臨床応用の可能性を示唆することができた。
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