研究概要 |
アブフラクションによるクサビ状欠損形成のメカニズムを解明するとともに,これら欠損に対する修復法の検討を行った結果,以下のような知見を得た. 1.人工的クサビ状欠損の形成 歯軸に対して45度に植立されたヒト抜去上顎小臼歯の頬側咬頭に,応力比10.0Kgf/2.5Kgfの繰り返し圧縮応力を周波数4Hzの正弦波で6x10^7回まで負荷し,形態学的変化をレプリカ法にて観察したところ,E-C境では,セメント質最表面に網目状の亀裂の発生し,疲労回数の増加に伴い亀裂の増加,微細化が観察された,E-D境では,smear層の脱落,細管の開口が認められると共に,E-D境直下の象牙質に剥離状のへき開型の亀裂が観察された.本結果から,クサビ状欠損形成,拡大の1つの要因に咬合が関係し,引っ張り疲労応力により歯頚部象牙質に生じた亀裂が穿下性に進行し,その上部エナメル質を遊離エナメル質の如く破壊し,欠損を形成させる可能性が示唆された. 2.修復法の検討 アブフラクションによって生じた欠損に対する修復には,材料自体が高い破壊抵抗性を持ちかつ接着界面部の応力を抑える低い弾性率を有する材料であることや接着疲労耐久性を持った接着界面(樹脂含浸層)を形成させる必要がある.光硬化型GIセメントに着目して,液,粉の成分ならびに表面処理を統一し,粒径のみを変化(mode径:5.1,4.1,2.3,1.5um)させた試作セメントの破壊靭性(K_<1c>)を測定した結果,0.98,0.94,0.83,0.76MPa^<1/2>の値が示され,破壊抵抗性を変化させることなく2.3umまでの微細化が可能であった.また,これら欠損に存在する硬化象牙質は酸による脱灰を減じ,幅の狭い含浸層を形成することから,優れた接着耐久性を得るためには幅の改善や含浸層の物性に影響を与えるレジンの侵入,重合程度を評価する必要があることが示された.
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