研究概要 |
5回以上根管治療を続けても、臨床症状が改善しない症例や2回以上根充填されたにもかかわらず再発を繰り返すような症例を、その臨床経過から難治性根尖性歯周炎と診断した。この条件に適合した32症例を対象とし「チェアーサイド嫌気培養システム」で根管内細菌検査を行った。分離細菌は、API-systemを用いて同定した。 その結果、すべての難治性根尖性歯周炎から微生物が培養陽性であった。このことは難治性根尖性歯周炎が感染症であることを示している。 いくつかの症例では、偏性嫌気性菌のPeptostreptococcus,Actinomycesが優勢に認められた。しかし、多くの症例では通性嫌気性菌のEnterococcus,Staphylococcus,Enterobactorあるいは真菌のCandidaが非常に優勢かあるいはpure cultureで認められた。これらの微生物による感染が難治性根尖性歯周炎の成立に大きな役割を果たしていることが示唆された。 感染細菌と臨床症状との間に相関が認められた。強い自発痛、明瞭な腫脹や激しい排膿などの、急性症状の発現や膿瘍形成にはPeptostreptococcus,Actinomycesなどを中心とした偏性嫌気性菌の増殖が関与している。一方、Candidaによる感染は、激しい打診痛と圧痛の発現に関与している。 これら難治性根尖性歯周炎の治療にあたっては、「チェアーサイド嫌気培養システム」に基づいた、抗生剤局所投与が有効であることが明らかになっている。今回、難治性根尖性歯周炎の原因微生物については明らかにできた。しかし、その病態、成立機序については、いまだ明らかではない。今後、難治化に関与する微生物の病原性状について研究を行うべきであると考えている。
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