研究概要 |
歯科用レジン材料の構成成分の多くは脂溶性が高く、それら材料の為害作用の一次標的部位である細胞膜との相互作用が考えられるので、歯科用レジンモノマーによる細胞膜脂質の微環境の状態変化とニュートラルレッド(NR)法、MTT法による細胞毒性試験法との相関について検討した。ヒト臼歯歯根膜由来のPL細胞を用い、NR法とMTT法による細胞毒性試験を行った。更に歯科用レジン硬化体を5〜100%工タノールに浸漬し、高速液体クロマトグラフィーで溶出物の同定も行った。50%の細胞に毒性を発現させる濃度はモノマーを24時間処理した場合ではUDMA>Bis-GMA>trimethylolpropane trimethacrylate(TMPTM)>ethylene glycol dimethacrylate(EGD)≧1,4-buthane diol dimethacrylate(BDD)>1,3-buthylene glycol dimethacrylate (BGD)>methyl methacrylate(MMA)>triethylene glycol dimethacrylate(TEGDMA)の順に毒性が強く発現した。1-(4-trimethylaminophenyl)-6-phenyl-1,3,5-hexatrieneで細胞を蛍光ラベル化した後、蛍光異方性及び偏光度を自動偏光解消測定装置を装着した分光蛍光光度計で測定し、レジンモノマー添加後のそれらの変化を検討したところ、その変化は細胞はUDMA>Bis-GMA>EGD>TMPT>BG=MMA≧BD>TEGDMAとなり、NR法とMTT法による細胞毒性試験法との相関関係を検討したところNR法とは相関係数は0.890であり、MTT法とは0.898であった。このようにレジンモノマーを24時間処理した細胞毒性試験法から得られた結果との間に非常によい相関性が認められた。更に硬化体の溶出物の解析から、床用レジンを5〜100%工タノールに浸漬すると40%以上の工タノールで過酸化ベンゾイルが濃度依存的に溶出されていること並びに全濃度ではMMA及び過酸化ベンゾイルの分解産物が溶出していることなどが明らかとなった。
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