研究概要 |
本研究では,Computed Radiographyを応用した骨ミネラル量計測システムを開発し,このシステムを用いて無歯顎下顎骨の骨ミネラル分布を調査した結果,以下の結果を得た。 1 骨ミネラル量計測システム 1) 計測システムは,精度1.4%(相対誤差),再現性1.1%(変動係数)の性能を有した。 2) 下顎骨横断切片上で測定領域を分割する方法により,測定部位を正確に座標化することができた。 2 無歯顎下顎骨の骨ミネラル分布 舌側および下顎下縁皮質骨では前歯部から臼歯部にかけて骨ミネラル密度は減少し,唇頬側皮質骨では逆に増加する傾向がみられた。海綿骨では,舌側,下顎下縁側の領域で臼歯部にいくに従い減少する傾向がみられたが,唇頬側では減少傾向がみられなかった。前歯部海綿骨では,歯槽頂側より下顎下縁側の方が骨ミネラル密度が高く,臼歯部海綿骨では頬側の方が舌側よりも高いことが認められた。筋付着部位の骨ミネラル密度は周辺部位よりも高い値を示した。同一部位の骨ミネラル密度の個体間における変動は,皮質骨ではオトガイ孔付近と臼歯部顎提頂部,海綿骨では前歯部の舌側,下顎下縁部,オトガイ孔より6mm前方付近を中心とした唇側部にて顕著であった。 以上のことから, 1) 無歯顎下顎骨の骨ミネラル密度では,筋付着部位や下顎管の走向経路による部位的変動が観察された。 2) 下顎骨にインプラント治療を行う際には,前項の部位的変動を考慮すると共に,臼歯部海綿骨の骨ミネラル密度が舌側より頬側で高いことも考慮する必要がある。また,海綿骨の密度が最も高い左右オトガイ孔間の部位にフィクスチャーを深く埋入することにより強固な支持を求めることは適切と考えられる。 3) 義歯装着による骨密度の変化をとらえるには,臼歯部顎堤頂付近の骨密度が指標として用いられる可能性がある。 4) 今回の研究で得られた無歯顎下顎骨の3次元骨塩量分布図は,骨粗鬆症のスクリーニング調査に有効であると思われる。
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