研究概要 |
中枢性制御系をも包含したシステム的顎運動機能の評価法は概念的に優れている,そこで,本研究は,顎機能異常者の顎運動関連脳活動の変調とその機能病理的かかわりについて検討を行った.被験者には顎口腔系に障害のない個性正常咬合を有する健常者ならびに顎関節にクリック雑音を有する顎機能異常者を用い,顎運動異常による脳活動への影響とその顎運動機能との関連について脳波あるいは脳磁場の解析を行った.1)健常者の開口運動準備電位は開口量の増加に伴って有意な増加を示した.2)顎関節有雑音者における開口運動の準備電位は開口量の増大に伴って低下する傾向を示した.顎関節有雑音者の開口運動に関連した脳電位は健常者より有意に低い値を示した.3)健常者の開口運動準備電位と顎運動および筋放電量とには関連性は認めなかった.4)顎関節有雑音者の開口運動準備電位は,とくに開口筋放電量とに負の相関性を示した.5)健常者の開口,閉口,側方運動における準備磁界は,いずれの運動においても両側の感覚運動皮質に発現した.6)健常者の開口運動の運動磁界は,感覚運動皮質に両側性に発現した.また,側方運動では運動側の対側感覚運動皮質で磁界の発現が優位であった.7)健常者の開口,閉口,側方運動における運動誘発磁界は,いずれも両側の感覚運動皮質領域に発現した.8)顎関節有雑音者の顎運動における運動磁界および運動誘発磁界は,運動障害様相に対応した運動磁界の変調ならびに運動誘発磁界の明らかな低下を脳磁図上に示した. 以上のことから,顎機能異常者における機能病理的感覚受容性は顎運動関連皮質領域の活動性に影響することが明かとなった.
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