研究概要 |
1. 義歯へのプラークおよび歯石様沈着物の沈着状態についての観察 義歯床へのプラークおよび歯石様沈着物の沈着状態を透過型電子顕微鏡とEPMAを用いて観察し,次の結論を得た. (1)プラーク中には,カルシウムと親和性の高い物質が含まれている. (2)プラーク中の細菌の原形質膜は,無機質の沈着を惹き起こす. (3)菌体間の線維状マトリックス,顆粒状マトリックス,そしてlamellated substance(LS)上に初期無機沈着物が観察されることから,マトリックス中には複数の核形成を惹き起こす物質が含まれている. (4)リン酸カルシウム化合物の沈着は,3日以内に起こりはじめる. (5)デンチャープラークコントロールは義歯装着当初から実践する必要がある. 今後は初期デンチャープラークの経時的変化を観察するために,義歯装着期間を7日間,14日間,30日間とし比較・検討を行うと共に,義歯床表面の性状(表面粗さ)を変えデンチャープラークの付着に相違が生じるかどうかを検討する予定である. 2. 義歯表面観察への原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope,SPM-9500)の応用 いままでミクロン(μm)レベル以下の微細な義歯表面の凹凸を観察することは困難であったが,最近実用化されてきた原子間力顕微鏡により,ナノ(nm)単位で3次元的な観察が可能になった.そこで義歯表面の観察に原子間力顕微鏡を用いてその有効性について検討を行った. 日常臨床で行われている研磨法により表面仕上げしたレジン試験片を観察したところ,走査型電子顕微鏡ではできなかったレジン表面の凹凸像の観察が簡単に,しかも正確に行うことができた.今後は義歯表面の形態とペリクルの付着,あるいは歯石様沈着物の付着の関係を研究するのに,原子間力顕微鏡が極めて有効な装置であることが示された.
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