研究概要 |
実験1.妊娠ラットに充填したアマルガム修復物から放出される水銀と母親および胎児組織中の水銀分布 妊娠ラット5匹を実験群,5匹を無処理の対照群として用いた.実験群には高銅アマルガムを1歯に充填した.アマルガム充填後,ラットを一匹づつ新陳代謝ケージに入れ,ラット吸気中からの水銀を妊娠2,8,15日目に24時間測定した.呼気中からの水銀は2日目に多く,時間の経過とともに減少する傾向を示したが,妊娠15日目にもかなりの水銀が認められ,水銀の増加は食物摂取後に著明であった.母親の場合,臓器中水銀濃度は腎臓が最も多く,次いで肺,肝臓,胎盤,脳であった.胎児では肝臓に多く認め,次いで脳,腎臓であった.母親の臓器,胎児の肝臓中水銀濃度は対照群よりも有意に高い値を示した.母親の全血,血球,結晶,胎児の全血中の水銀濃度は対照群よりも有意に高かった.胎児の脳,肝臓,腎臓,全血中の水銀量は母親よりも少なかった. 実験2.妊娠ラットに充填したアマルガム修復物からの水銀放出と母親および胎児の血液および尿中水銀量 20匹の妊娠ラットを5匹づづ4群(グループA,B,C,D)に分け,グループAは無処理の対照群,グループBは1歯充填群,グループCは2歯充填群,グループDは2歯充填群とした.アマルガム充填後,一匹づつ新陳代謝ケージにいれ,ラット呼気中からの水銀を妊娠2,8,15日目に24時間測定した.尿の採取は2日毎に行った.呼気中からの水銀は2日目に多く,時間の経過とともに減少する傾向を示したが,妊娠15日目にもかなりの水銀が認められ,アマルガムの面積と相関が認められた.全血,血漿中,尿中の水銀量はアマルガム充填歯数に比例して増加する傾向が見られた.全血,血漿,尿中の水銀量はアマルガム面積とラット呼気中の水銀量と相関が認められた. 実験3.写真エマルジョン法による水銀顆粒の観察 30匹の雌性ラットの上顎臼歯4本に高銅型アマルガムを充填し,6ヶ月経過後に還流屠殺し,写真エマルジョン法により水銀顆粒の観察を脳,肝臓,腎臓について行なった.水銀顆粒は脳では認められず,肝臓ではその存在は明確ではなかった.それに反して,腎臓では近位尿細管の細胞内に水銀顆粒が認められた.
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