研究概要 |
市販の鋳造用コバルトクロム合金の7種類と加工用コバルトクロム合金の1種類に対して,パルスYAGレーザ照射による溶接性を調べた結果,以下のことが判明した. すべての市販の鋳造用コバルトクロム合金のレーザ溶接部には割れが発生した.鋳造用コバルトクロム合金の破面は,母材,溶接部ともに脆性破壊破面であり,溶接部の一部には凝固割れ破面が認められた.一方,加工用コバルトクロム合金のレーザ溶接部には割れは発生しなかった.破面は母材,溶接部ともに延性破壊破面であった.鋳造用コバルトクロム合金の溶接部は硬化したが,加工用コバルトクロム合金では軟化した.母材の粒界にはモリブデン,ケイ素,硫黄,炭素が多かった. 3種類の鋳造用合金の微量成分含有量を化学分析した結果,割れ発生が最も大きかった合金は,ケイ素,炭素およびリンを多く含むことが判明した.X線回折によると,鋳造用合金の母材は最密六方晶構造であったが,溶接部は面心立方晶構造であることが判明した.一方,加工用合金の場合は,母材および溶接部ともに面心立方晶構造であった.鋳造用合金の溶接部の破面上にはケイ素の酸化物と思われる介在物が多く認められた.また,アルミやクロムの酸化物やカルシウムの硫化物も認められた.以上から,溶接部の割れの原因として,炭素,ケイ素および硫黄の存在が考えられた. 炭素が少ない合金のレーザ溶接性を検討したところ,割れの発生は抑制されること,アルミが割れを発生させることが判明した.また,割れ発生が少ない合金では溶接部をオーバーラップさせることによって割れを抑制できることが判明した.さらに,パルス波形の制御によって,溶接欠陥の発生が抑制できることが判明した.
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