研究概要 |
インフォームドコンセントの本質である「説明と同意」のなかから,患者が医師から負荷される刺激の情報を十分に説明されることの重要性を検討するために印象採得および浸潤麻酔時のストレス反応に及ぼすインフォームドコンセントの効果について検討を行った.被験者は本学学生とし,I.C.群10名,n-I.C.群10名に分けた.印象採得は上顎をアルジネート印象材で行った.印象採得時のストレ反応は自動血圧計を使用し,血圧および脈拍数の測定を行った.また前腕皮静脈に静脈路を確保し,被験者に負荷を与えないように採血を行い,血中カテコールアミンの測定を行った.各データの測定は印象採得後30分まで経時的に行った.浸潤麻酔時のストレス負荷に対するインフォームドコンセントの効果についてはI.C.群14名,n-I.C.群14名に分けた.上顎前歯部歯肉への浸潤麻酔時のストレス反応は印象の実験と同様の条件で各パラメータにつき測定を行った.その結果,印象採得により血圧.脈拍数および血中カテコールアミンは上昇傾向を示し,これらの上昇率はI.C.群と比較してn-I.C.群のほうが大きかった.印象採得後、I.C.群の収縮期血圧およびノルエピネフリンが15分後に安静時と比較して有意に低下したのに対し.n-I.C群の各パラメータは高値を維持したままであった.浸潤麻酔により血圧は両群とも刺入時に安静時よりも有意な上昇を,カテコールアミンは上昇傾向を示した.これら両者ともに上昇率はn-I.C.群のほうが大きかった.指尖部血流量の変化は、I.C.群は有意な変化を示さなかったのに対し,n-I.C.群は刺入時に安静時と比較して有意な低下を示した. 以上より,印象採得および浸潤麻酔といった実験的歯科処置下でインフォームドコンセントにより負荷する刺激の内容を十分に説明することでストレス反応を緩和する効果があることが明らかとなった.
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